忍(SHINOBI)コラム(3)

━━━求められる魅力を探して



九忍会佐世保支部/ハウステンボス維新館 国際武道場 道場長
立石道淳(たていしどうじゅん)

 ハウステンボスで「国際武道場」を開設しようと決めたのは2011年1月の事である。テーマパークの中に武道の道場を開くなぞ、誰が考えても「不似合い」であった。
しかし、ハウステンボスの澤田社長は違った。
 「ハウステンボスには世界中の人が集まります。澤田社長も海外からの観光客の誘致に重点を置かれているとお聞きしております。だからこそ私は、武道をハウステンボスで海外の方に観て頂き、世界へ武道を発信したいのです!」
と私が申し上げると、澤田社長は「面白いですね!いいですよ。」と言われた。2011年3月、維新館誕生の瞬間である。
 大変なのはそれからであった。ハウステンボスと同じく維新館も365日無休。開設当初、生徒は殆どいないのに、常に開放しておかなければならない。観光客に何を見せようかと苦心の末、道場にあった折れた竹刀から「弓矢」を、短い棒に粘土をつけて「棒手裏剣」を作ってみた。的は紙コップである。手作りの粗末な道具にもでお客さんは喜んで頂き、中には購入頂く方もいらっしゃった。
 まだまだ仕事と呼ばれるレベルの話ではなかったが、何もないところから喜んで頂く「何か」を生み出し、それに評価を頂く事の喜びが「仕事」への力と源泉になる事を感じたのである。
 武道も人に必要とされてこそ。求められる魅力は何処にあるのか?手作りの道具をお客様に喜んで頂く事で、私は自分が発信すべき事の輪郭をようやく捉えることが出来たのである。
 2012年5月、累計1万人の体験者を越えた頃に、インターネットを通じて「九州忍者保存協会」の存在を知った。何かピーンと来るものを感じた私はすぐに連絡を取り、会長である剣源蔵さんと、運営母体である肥前夢街道の河野取締役専務と御会いし意気投合。維新館は九州忍者保存協会の佐世保支部となった。
日本文化を、「エンターティメントとしての忍者」というスタイルで発信する下地が出来たのである。


(維新舘にて練習)

  2012年8月、剣源蔵さんが「空中りんご赤道斬り」で世界記録を更新する。その事をハウステンボスの澤田社長へ報告する際に、「九州忍者保存協会は九州の観光を盛り上げるエンターティメント集団です。是非澤田社長にも忍者大将軍(名誉頭目)になっていただきたいのです!」とお願いに伺うと、なんと澤田社長は快く引き受けてくださったのだ!就任式の模様は、各メディアで取り上げられたので、ご存知の方も多いであろう。
 ついに維新館は、「忍者エンターティメント(観光)」と「武道(教育)」との両面を備える下地が出来上がったのだ。
 また、ハウステンボスに隣接する米軍基地住宅の家族達が次々と武道を習いに集まってきた事で、我が道場は、他国から来た家族にとって気軽に日本文化を親しめる場所となったのである。
 テーマパーク内にあり、忍者エンターティメントと武道教育の両輪で道場を運営し、海外の生徒が多いという道場は世界中探してもわが道場だけの特色だと考えている。

 最初に志だけがあった。

 ほかは何も無かった。しかし、それを受け入れてくれたハウステンボスと澤田社長、ハウステンボスを訪れる観光のお客様、米軍家族の方々、九州忍者保存協会の仲間。そうした方々に支えられ、教えられて、今があると心から感謝している。
 そして、今の幸せな状況にも決して甘んじてはならない。
次の飛躍をそろそろ準備する時期だ。よりダイナミックにスケールを広げ、喜びを大きく発信したい。


(生徒達と一緒に)